虎徹さんの受難


バニーは俺の下着を下ろして股間をむき出しにすると、萎えているソレにそっと舌を這わせた。
背筋に電流が流れたみたいに、ぞくぞくっとする。
バニーは目を閉じて、俺のものを丁寧に舐めてあげる。
こいつ、睫毛なげーな。
上から見下ろすバニーの表情は、なまじ美形なだけにとんでもなく卑猥だ。
だいたい、普段は絶対コイツを見下ろすことなどできないので (まったく今時の若いモンは背ばっかり伸びやがって)、俺の前で膝まずく姿なんて本当に貴重だ。
そう考えたら、ちょっと興奮してきた。
「・・・かたくなってきた」
バニーは満足そうに呟いた。
やおら立ち上がろうとして、一瞬はにかんだ。
「ごめんなさい、前見せたら、萎えちゃいますよね」
バニーはくるりと後ろを向いて、腰に巻いていた毛布をはらりと落とした。
要らん気遣いを。
目の前に現れたのは、見事な曲線美。
思わず、目が行ってしまうのは、男の本能。仕方ない。
こいつは、顔だけじゃなく、体も綺麗なんだよなあ。
これが男の――それも、クソ生意気な相棒の尻だと知らなければ、かなりイイ眺めなんだが。
バニーは無防備な下半身をさらしながら、ゆっくりと俺の膝の上に腰を下ろした。
すっかり勃ちあがっている俺のモノを探して、腰を微妙に前後させる。
きゅっと目をつぶっている横顔は、まるで神の前で祈りを捧げているように神妙だ。
「んっ」
「わ、きっつ・・・」
バニーと俺が同時に声を上げた。
ならされていないバニーの後ろは、固いつぼみのようだった。
それでも、バニーの奴は自分で自分をこじあけるように、腰を沈めていく。
きつい。
入れる方の俺でさえ痛いくらいなのだから、呑み込むバニーの方はもっと辛いだろう。
もともと他人を受け入れるようになんて出来てないんだから。
しかし、バニーはやめようとしない。
その背中は頑なだ。
こいつは、射精の快楽は求めない。自分の体の奥に隠された禁断の愉悦でしか満足できないのだと言う。
程よく筋肉のついたその背中は美しいけれど、あくまで男性的な美しさ。
こいつが声をかけたら、どんな女だってイチコロだ。
なのに、何がこいつをこんなけったいな行動に駆り立てるんだろう。
きゅ、とバニーが俺を締めつけてきて、彼が絶頂に近づきつつあることを知った。
「ああ・・・」
バニーはうっとりと目を閉じた。

何やってんだろうな、俺?
冷静に考えれば、男の尻に突っ込むなんて、どうかしてる。正気の沙汰じゃない。
でも、俺が逃げれば、こいつが別の男を探しに行くのは分かり切っている。
素性の知れない不特定多数を相手にするのは、やっぱりいろいろ危険だ。
もちろん、何かあっても自業自得と言えばそれまでだけど。こいつはもう立派な大人なのだし。
さっき『頭の悪い女子高生と一緒にするな』と言ってたけれど、 確かにお前は、自分のやっていることがどんなことなのか、正確に分かったうえでやっている。 頭のいいお前は、だからずっとタチが悪い。
そんな必死な顔をして。
俺一人が我慢すれば、全ては丸く収まるのだから・・・って思ってしまうだろ。
逆だったら――突っ込ませてくれっていう頼みだったら、さすがにダッシュで逃げるけどな。
それにまあ、こいつなら、なんとか我慢できるっていうか。
肌なんて雪のように真っ白で、つるつるで、触ると指が吸い付くように滑らかだし。
腰のラインなんて、綺麗だもんなあ。思わず撫でてみたくなる。
「んっ」
バニーが眉根を寄せたので、俺は慌ててその顔を覗きこむ。
「あ!ごめん、痛かった?」
「大丈夫です・・・」
「痛かったら、我慢しないで言えよ?」
「はい・・・」
「このくらいならどう?大丈夫か?もっとゆっくりした方がいい?」
「・・・」
「なあ、大丈夫か?」
「・・・チッ」
え?舌打ち?いま、舌打ちしたよね!?
「いちいち、うるさいです」
バニーがむすっとした顔で振り返ってきた。
「いちいち聞かないでくださいよ!集中できないじゃないですか!
あなた、女性とやる時もこんな風なんですか?」
長い下睫毛ごしに、冷ややかな視線を送ってきた。
「んなワケねーだろ!」
「どうだか」
フッと鼻先で嘲笑いやがった。
俺に後ろから突っ込まれた態勢でも、クソ生意気な態度はそのままか。
「お前なー・・・俺がどんだけ遠慮して気遣ってると思ってんだ」
「は?なんで、僕なんかに気を使う必要があるんです」
「遣うに決まってるだろー。
お前は女じゃねえんだから。どう考えたって、体への負担が大きいだろ。
無理じゃないか痛くないか、確認しながらじゃなきゃ進めない」
「・・・あなたがいちいち痛くないか聞くのは、 僕の体を心配してくれてるってことなんですか?
自分のテクニックに自信がないせいじゃなくて」
バニーは心底びっくりした顔をしている。
・・・こいつ、本当に一言多い!!
組み敷いている金色の頭をどついてやろうと思ったら、
「あははっ」
ふいに、バニーが笑いだした。
「あなたって、本当に時々すごく面白いこと言いますね」
面白い?今、笑うようなこと言ったか?俺。
「そんな面倒くさいこと、考えてたんです?
僕は、男に突っ込まれることでしか興奮できない変態なんです。
あなただって、僕なんか軽蔑してるでしょう。
乱暴にされたって平気です。慣れてますから。遠慮なんてすることはない」
相変わらずバニーは可笑しそうにくすくす笑っている。
だから俺は、さっき、どついたろと思って伸ばした右手で、バニーの金色の頭をそっと撫でてやった。
「親からもらった体は大事にしとけ?」
すると、バニーのグリーンアイズが冷たく光った。
「こんなことしてる時点で、親に顔向けできませんから。 つまらないこと気にしないで、メチャクチャにして下さって結構!」
「分かってねえな、バニー。親ってのはな、子供が幸せなら、細かいことはどうでもいいの。
本当の愛情ってのは、そんな底の浅いもんじゃねえよ」
「・・・もういいです。興ざめだ」
バニーは下半身に呑み込んでいた俺のモノを放した。
絶頂を極めることなく、 腰にタオルを巻いて立ち上がる。
「シャワーお借りします」
寝室から去ろうとするバニーに声をかけた。
「バニー、俺がお前を軽蔑してると思ってるのか?」
「違うんですか」
振り向きもせずそう返事を放り投げ、バニーは寝室から出て行った。
・・・やれやれ。
お前は、簡単にそういうこと言えちゃうんだよな。
だから、ほっとけないんだよ。

シャワーを浴びて寝室に戻ってきたバニーはてきぱきと脱いだ衣服を身に着けていく。
ベッドでごろごろしていた俺は驚いた。
「え?お前、帰るの?」
もう終電はとっくの昔に出ているし、こんな時間じゃタクシーだってつかまらないだろう。
てっきり泊まっていくものだと思っていた。
だが、バニーはそんな俺を見て怪訝な顔をする。
「もう用は済みましたし。これ以上一緒にいる意味がどこに?」
用って・・・
「酒でも飲みながら、語り合おうぜ」
「話すことなどありません。 僕もいろんな男と寝ましたけど、終わった後までしつこく絡んできた人はいませんでしたよ」
「そりゃ、行きずりの相手に自分のことベラベラ喋るのは危険だけどさ。
俺はお前の相棒なんだし?いいだろ、別に。付き合えよ。
ヤってスッキリしたらハイさようなら、じゃ、情緒もへったくれもねえだろが。
なんかもう、いかにも体だけが目当てですって、感じ悪いだろ」
「実際その通りなんだからいいじゃないですか」
バニーは不思議そうな顔をした。
「僕たち、恋人なんかじゃないんだから」
・・・ええ、バニーちゃんのおっしゃる通りですけどね。
「だったら、恋人でも何でもない俺がどうしてお前に付き合ってこんなことしてるんですかね?
そこんとこ、お前はどう思ってるわけ?」
すると、バニーは考えるように小首をかしげていたが、やがて得意げな表情を浮かべた。
「僕のフェラは絶品でしょう。
男相手に勃たないとか無理とかさんざん言ってたわりに、 あなた、毎回ちゃんと勃ってますもんね」
・・・お前な。
「とにかく今夜は泊まってけよ。今さら家に戻ったところで、眠る時間ねえぞ」
「僕の寝る場所なんて、ないでしょう」
「ここ」
ぽんぽん、とベッドを叩く。
横たわった俺の隣に半分空けたスペースを。
「一緒に寝ろと?」
バニーはそれはそれは嫌そうな顔になる。
なんで嫌がる?あんなコトまでしておいて。今さら同じベッドで寝るくらいなんだというのか。
まったくコイツは理解不能の生物だ。
「いいから、寝ろって。身がもたねえぞ」
俺はバニーの手をつかんで、強制的にベッドにひきずりこむ。
「止めてください!」
とたんに、バニーは悲鳴を上げた。 まるで、男に強姦されかけてる女の子みたいに。
俺が怯むと、手をふりほどいて、
「他人と一緒に寝るのは嫌なんです!」
叫んだこいつは、このまま同じベッドにいたら舌噛み切って死にます、くらいな真剣な表情をしている。
俺はため息をついて、ベッドから降りた。
「じゃ、お前はここで寝ろ。俺はリビングのソファに行くから」


・・・暗闇の中、生き物の気配がして、俺は目覚めた。
いつの間にかリビングのソファで眠ってしまっていたらしいが、外はまだ真っ暗闇だ。
バニーは寝室だし、ここには俺しかいないはず。
なのに、絶対何かいる!
じっと耳をすますと、闇の中に呼吸音がする。
どうやら、ソファの足元らしい。
思い切って見てみると・・・
毛布の塊があった。
てっぺんからは、金色が見える。
毛布の端っこから飛び出している金髪には、確かに見覚えがあった。
ということは、この物体は・・・毛布をすっぽり被って床に座り込んだバニーか。
「バニー?お前、こんな所で何してんだよ?」
俺は毛布をかぶったバニーを揺すった。
「ベッドで寝ろよ」
「・・・放っておいてください」
くぐもったバニーの声が聞こえてきた。顔は毛布に包まれていて見えない。
「なんだよ、ションベンしに来て、寝室の場所が分からなくなったのか? ほら、ベッドに連れていってやるから」
「違います。とにかく僕のことはほっといて、寝てください」
「そんな姿勢じゃちゃんと眠れないだろー?ベッドに戻れって」
俺がバニーを抱えようとすると、バニーは体を固くした。
「ほっといて下さいって言ってるでしょう。ここでいいんです」
「そういうわけにはいかねえだろ」
「嫌だ!」
発せられた声の荒さに、俺は怯んだ。
「ベッドには戻りたくない」
「怖い夢でも見たか?」
俺の言葉に、バニーがびくっと体を震わせた。
だから俺はその隣に腰を下ろして、バニーの肩に腕をまわした。
空いた方の手でその頭を撫でてやる。
娘がまだ幼かった頃――母親を亡くしたばかりの頃、こんなことがあったなあ。
夜中に突然飛び起きて、お母さんはどこ?と泣きながら家の中を歩き回って。
一晩中そばにいて抱きしめてやって、ようやく眠りについたものだ。
楓にやっていたように、俺はバニーを抱きしめた。
「大丈夫、もう怖いことなんてないよ。お前が見たのはただの夢だ」
「・・・夢だったら良かったのに・・・」
小さな嗚咽が聞こえる。
俺はバニーの背中を撫で続けた。
バニーは泣いて泣いて泣き疲れるまで泣いて、明け方にようやく眠りについた。


「・・・あんなみっともない所を見られるなんて・・・よりによって、おじさんに」
翌朝、バニーは激しく自己嫌悪に陥っていた。
「みっともない?そうかあ?素直で可愛かったぞー。 ぎゅっと俺にしがみついてきて。娘の小さい頃を思い出したわー」
睨んできたバニーの目の輝きは、ほとんど殺意と言っていい。
「・・・だから、嫌だったんだ。 全く、何のためにあなたに頼んだと思ってるんです。 とんだ役立たずだ」
役立たずだあ!? 言うにことかいて、何てことを!
「俺がずっと背中撫でてやったから、お前は眠れたんだろーが。 おかげでこっちは睡眠不足だ」
「そんなことは頼んでない。僕を抱いてくださいって言ったんです。
メチャクチャにしてくれたら、くたびれ果てて泥のように眠れたのに。 気絶してしまえば、悪夢にうなされずに済むのに」
気絶って・・・どんだけ激しいのをお望みなんですか、このバニーちゃんは!!
「お前、今まで毎晩そんなことしてきたのか?夢を見たくない一心で?」
「・・・さすがに毎晩じゃありませんけど。身がもたないので」
「それにしたって」
「いい加減にしてください! あなたは、頼まれたことだけきちんとやれっていれば、それでいいんです。
僕の体が壊れようがどうしようが、あなたには関係ない。
仕事は仕事、ちゃんとやりますから。
あなたも僕のパートナーなら、僕の足を引っ張らないでくださいよ」
・・・ほんっとーに可愛くない!


そんなことがあってから一週間ほど経った頃。
その日バニーが受けていたインタビューがまとめられて、見本として雑誌が届けられた。
バニーのスカした顔が表紙を飾っているそれは、親が子供に買って与えるような学習雑誌だった。
あいつ、子供向け学習雑誌の取材受けて発情したのかよ!?
なに考えてんだ!?
バニーが席を外している隙に、俺はページをめくってみた。
子供の頃はどんな子供だったか?とか、将来の夢は何だったか?といった、 子供向けの雑誌らしい質問が並んでいる。
両親の影響で科学者になりたかった、とバニーが答えたのをきっかけに、 話は両親との思い出に移っていった。
両親はロボット工学の研究をしていて、公私ともに良いパートナーだった。 時には、家でも仕事のことで議論しあったり。 よく自宅に遊びに来ていた両親の友人は、子供の前でケンカはよくないと窘めたりしていたけれど、 僕はちっとも嫌ではなかった。 話の内容は理解できなくても、父と母がお互いにお互いの話を真摯に聞いて、 敬意を払っていることが子供ながらに感じられていたから。 そんな二人が大好きだった。
僕がまだ字を覚えたての小さな頃、両親はどんなに仕事が忙しい時でも、毎晩絵本を読んでくれて、 それがとても楽しみだった・・・云々。
インタビューの最後を、バニーはこう締めくくっていた。

『両親と暮らせる時間を大事にしてください。
家族みんな揃って一緒にいられたら、それだけでとても幸せなことなのですから』


つづく



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