(注意!)
この話は下記内容が含まれますので、苦手な方はエスケープ願います
・アニエスさんがヒドイ
・虎徹さんがほんのり変態(ロリ衣装フェチ?みたいな・・・)
・マベさんがルナ先生に見逃されて生きている
(なぜマベさんを死んだことにしなかったのか、と言うと、単に管理人の好みです。
生きていて、時々バニーちゃんの豆腐メンタルの刺激剤になってほしい、という・・・)
・おじさんに厳しいツンバニ仕様
・バニーがコスプレ(変装、女装)
・バニーなのに仕事を選ぼうとしている
上記項目が許せる方は、Go Next↓
トレーニングルームに向かって、虎徹がいつもの廊下を歩いていると、
正面の曲がり角からバーナビーが飛び出してきた。
虎徹の顔を見るなり、
「アニエスさんが来たら、僕はもう司法局に出かけたと言ってください!」
そう言って、ちょうど近くにあった非常階段への扉を開けて駆け込んでいった。
いつもクールな相棒には珍しいせわしない動作に、虎徹が呆気に取られていると、
「タイガー!バーナビー、見なかった?」
バーナビーの現れた角から、すぐにアニエスがやって来た。
「あいつなら、もう司法局に出かけちまったよ」
虎徹がそう答えると、彼女は綺麗に整えられた眉をつり上げて、
「もう!今度は逃がさないから!」
口惜しそうに呟くと、立ち去っていった。
「・・・バニー、もう行ったぜ、彼女」
アニエスの背中が小さくなっていくのを確認して、虎徹が言うと、非常階段への扉が開いた。
「ありがとうございます」
バーナビーが姿を見せた。
「美女に追い回されるなんて羨ましいねー、色男」
虎徹がからかうと、彼の年下の相棒は眉間に皺を寄せた。
バニーちゃんはすぐムキになるので、からかい甲斐がある。
「で、一体どうしたんだよ?」
虎徹が尋ねると、バーナビーはむすっとしたまま答えた。
「アニエスさんときたら、人の顔を見るたびに、ディナーショーをやれってしつこくて・・・」
「ディナーショー、イヤなの?」
「嫌ですよ」
「仕事選ばないお前が珍しい」
「どういう意味ですか」
バーナビーがますます不機嫌な顔になったので、虎徹は言った。
「雑誌の取材も、テレビ番組の出演も、水着のグラビアも、
ノリノリでこなすお前が・・・ディナーショーはイヤなのか?」
「カメラの前で愛想笑いして済むことなら、別にかまいませんよ。
でも、ステージとなったら、ただニコニコしてるだけじゃ済まないでしょう」
「いいじゃん、お前、カラオケ上手いし」
「カラオケとは全然違いますよ。
あの時はお酒も入ってましたし・・・よく知っている人たちの前で歌っただけですし。
素面で公衆の面前で歌なんて歌えません。恥ずかしい」
ビキニパンツでポーズ決める方がよっぽど恥ずかしいと思うのだが。
相変わらず、こいつの基準は分からん。
虎徹が返事をしかねて頭をかいていると、バーナビーの言葉にはまだ続きがあった。
「それに今は、とてもそんな気分になれませんし・・・」
エメラルドグリーンの瞳が暗く翳った。
――なるほど。そういうことか。
それなら、虎徹にも分かる。
「マーベリックの事件の裁判中だもんな・・・
そういや、お前も証人として出廷求められてるんじゃなかったか?」
「ええ、これから司法局に行ってきます」
若者の顔に差した暗い影を見て、
「よし、じゃあ、おれも付き合うぜ」
虎徹がそう言うと、バーナビーは、
「一人で大丈夫ですよ、子供じゃないんだから。
大体あなた、経費清算の申請、まだ済んでないでしょう?
ヒーローの前に会社員なんですから、ちゃんと仕事してください」
いつもの生意気な若造の顔に戻った。
「夕方には会社に戻りますから。
それまでに、ちゃんと済ませておいて下さいね!」
ビシッと人差し指で虎徹をさして、いつもの高飛車な口調で言うと、バーナビーは司法局に向かっていった。
マーベリックは現在、
二十年前にバーナビーの両親を殺害した件と先日のサマンサさん殺害の二つの事件に関して、
被疑者として取り調べられている。
身柄を拘束された護送中に、あのルナティックに襲われたものの、なぜかマーベリックは殺されず、
そのまま司直の手にその運命は委ねられた。
「ルナティックはなぜマーベリックを殺さなかったんだろうな?」
その話を聞いた時、虎徹は率直に疑問に思ったものだが、バーナビーは、
「・・・今のマーベリックには、記憶も証言する能力もありませんからね・・・
彼の背後にある、もっと大きな悪を暴くために、あえて殺さなかったのかも・・・」
そう答えた。
もっと大きな悪。
『ウロボロス』
その存在感は、両親を殺した真犯人が分かった今でも、バーナビーの中から消えることはなかった。
それは、虎徹が出会ったばかりの頃と変わらずに、今でもあの若者の心に暗い影を落としている。
マーベリックがした己れの罪の告白は、真実に導く光とはならず、
むしろ、バーナビーの心を余計に過去に引き付ける結果になっている。
虎徹にはそう思えてならない。
若者には、過去を振り返るよりも、未来を見て歩いていってほしいのに。
そんなことをつらつらと考えているうちに、時計を見るともう五時だ。
「やっべー!まだ経費清算できてないのかって、バニーにどやされる・・・」
慌てて机の引き出しを開け、提出する領収書の束を探し始めた――ものの。
「だーっ、なんでバニーに叱られなきゃならねーんだよっ!
ロイズさんに言われるんなら、分かるけど!
お前はおれの上司かっつーのっ!」
「だったら、言われる前にやってください。僕も言いたくて言ってるわけじゃありませんので」
背後から、冷たい声が響いた。
「わっ!バニー、戻ってたのかよ・・・」
虎徹が振り返ると、そこにいたのは――
思わず虎徹は目を疑った。
声は確かに、聞きなれた相棒のものなのに、姿がまるで違う。
金色だったはずの髪は赤く、ウエーブのかかっていた毛先は背中まで届くストレートに。
トレードマークの眼鏡もなく、緑色だったはずの瞳も闇のように黒い。
知らない男がオフィスにいる。
「・・・どちらさま?」
思わず虎徹が尋ねると、若者はふっと鼻で笑った。
そのキザな表情は、間違いなく彼の年下の相棒のもの。
虎徹には訳が分からない。
「あなたに分からないようなら合格ですね、僕の変装」
「バニー?バニーなのか?」
虎徹は目をしばたいた。
「一体どうしたんだ?その格好」
「明日一日、休暇をもらって出かけるのに、ヒーローのバーナビーだと知られたくなくて。
それで、行き着けの美容師に相談したら、とても張り切ってくれまして。
アクセサリーまで貸してくれましたよ。
エクステンションもたくさんつけてくれて」
耳にはいくつものゴールドの飾りが光っている。
そして――
「えくすて?」
聞きなれない言葉に、虎徹が聞き返すと、バーナビーは赤い髪をかき上げた。
「この髪です。付け毛っていうか・・・」
この顔立ちで、このロングヘア。
虎徹は思わず呟いた。
「どこのビジュアル系バンドの兄ちゃんかと思ったぞ・・・
眼鏡なしでちゃんと見えてるのか?」
「度つきのカラーコンタクト入れてるんで。
あなたの申請書が真っ白だってこともよく見えてますよ」
いちいちイヤミな奴。
その姿は別人のように派手になっても、中身はいつものこいつだ。
司法局でマーベリックの事件のことを聞いて、もっと暗い顔をして帰ってくるかと思えば・・・
安心した。
「明日、休暇取ったのか。
そんなに、アニエスのディナーショー攻撃から逃げたかったとは」
虎徹がからかうと、バーナビーは露骨に軽蔑の眼差しを寄こしてきた。
「そんなつまらない理由で、仕事を休んだりなんてしません」
どんな幼稚な発想ですか。
口ほどに物を言う若者の目がそう言っているのが分かる。
「明日、出動要請があっても、無茶しないでくださいね。
僕、あなたのフォローできませんから」
「上等、上等。
で、明日はその格好で羽根のばすってことか。
ま、気分転換になっていいわな。
楽しんでこいよ」
虎徹が背中をぽんと叩くと、バーナビーは頷いた。
「ええ、明日はこの街の最下層のスラムに行ってきます」
「へ?スラム?
スラムって・・・そんな名前の新しい名所なんてあったっけか・・・?」
「スラムはスラムですよ。この街の犯罪者の巣窟」
バーナビーは答えた。
「ウロボロスのタトゥーを入れた奴を探しに行ってきます」
「おい、バニー!」
「大丈夫ですよ。深入りはしません。
ただ、ウロボロスのタトゥーを探して・・・もしいたら、そいつの外見を覚えて、
こちらに戻ってきて素性を調べますから」
「はあっ!?一人じゃ危ねえよ!おれも一緒に――」
「あなた、まだ仕事終わってないでしょ。
ロイズさんが休暇なんて許可してくれませんよ。
大丈夫、一人の方が動きやすい。
スラムに行くのは初めてじゃありませんしね」
「え?」
「十代の頃には何度か行ってましたから」
「スラムにか?お前、グレてたの?」
「違います。ウロボロスのことを調べるために決まってるでしょう。
犯罪組織の情報を集めるには、犯罪者が集まる場所に行くのが一番てっとり早い」
「ったってお前・・・」
「子供の方がかえって相手も油断するからいいんですよ。
能力発動させたら、大抵の人間は怯みますからね・・・
ハイスクール卒業してからは、だから、危ないので行ってません。
余計なことに巻き込まれて、まかり間違って前科でもついたら、
ヒーローの仕事できなくなってしまいますから」
「なんつー無茶を・・・」
端正な顔に浮かぶ静かな笑みを見て、虎徹は初めて気付いた。
この若者の抱える闇は、自分が思っていたよりもずっと深いのかもしれない、と。
「明日一日だけだぞ」
虎徹は年下の相棒にそう念を押した。
「明後日の朝には、ちゃんと会社に戻ってくるんだぞ」
「分かってます。あなたこそ、人の心配より自分の心配した方がいいですよ」
いつもの澄ました笑みを残して、バーナビーはオフィスを後にした。
つづく
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